こんにちは。桜畑です。1年前、早期退職して半径500メートル生活をはじめました。あまりに快適だったので、これでいいの?と思って読んだのが、前野隆司氏著の『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』。古今東西の「幸福に関する研究」を研究し、さらに15,000人の日本人の幸福度調査から、因子分析という手法で幸せの4つの要因を導き出して解説した名著です。
自分が日々充実してる、幸せだなって感じるのはなぜか、なるほどーって膝を打ちました。
この記事では
- 本当の幸せってなに?
- 会社に属さなくても不安にならないの?
- リタイアしたら孤独に耐えられなくならないかな?
といった疑問にこたえていきたいと思います。
目次
1,あなたの人生満足度は?
この本の前半に掲載されているのが、有名な「ディーナーの人生満足度尺度」。
自分が感じている幸福度(主観的幸福)を測ることができます。
下の5つの質問に、7段階で点数をつけて、合計を出してみましょう。
人生満足尺度の質問
- 1. ほとんどの面で、私の人生は私の理想に近い
- 2. 私の人生は、とてもすばらしい状態だ
- 3. 私は自分の人生に満足している
- 4. 私はこれまで、自分の人生に求める大切なものを得てきた
- 5. もう一度人生をやり直せるとしても、ほとんど何も変えないだろう
- 全くそう思わない…1点
- ほとんどそう思わない…2点
- あまりそう思わない…3点
- どちらともいえない…4点
- すこしそう思う…5点
- かなりそう思う…6点
- とてもそう思う…7点
前野先生の調査によると15歳~79歳の日本人15,000人の平均は18.9点。分布図を見ると30点は上位4%。
無職無収入ひきこもりな私は、なんと、100人中4人しかいない幸せな人の1人ということですね。
時間に追われず、規則正しく運動、食事をし、高い目標もかかげず、今まで働いた貯金があり、家族に貢献しつつ、やりたいこともやっているので、当然ですね。
2,無職、無収入は不幸?
①持続しない幸福と、持続する幸福
前野先生の本に、イギリスの心理学者の、「幸福の持続」に関する説が紹介されています。
A,地位財ーー周囲との比較により満足を得るものー「所得・社会的地位・物的財(モノ)」
B,非地位財ーー他人との比較と関係なく幸せが得られるものー「健康・自主性・社会への帰属意識・良質な環境・自由・愛情」
Aは持続性が低く、Bは長続きする幸せ。
セミリタイア前と後の生活は、会社とポストと収入を捨てて、マイペースな生活に突入するので、超わかりやすい「AからBへのシフト」と言えますね。
➁人目にはわかりにくい「持続する幸福」
女性が結婚して子どもを持って働いていると「子育てしながらバリバリ働いてえらいわね~」「ダブルインカムかぁー、お金あっていいなぁ」とか言われます。本人は(だからたいへんなのよ~)という気持ちが勝るものの、悪い気はしません。それが幸せということなのか?となんとなく思っていました。
ところが、残り少ない人生時間を考え、思い切って会社を辞めてみたら、健康診断の結果が見たこともないほどよくなりました。マイペースで読書や思考の整理、発信をしているときは完全にフロー状態に入れて、これこそ幸福?って思います。会社は人が多い分、集中できずストレスフル。在宅勤務してても連絡の嵐だし。
でも、周囲の人からは「なんで油ののってる今、仕事辞めちゃったの?」「毎日何してるの?何が楽しいの?」…(笑)。さっぱりわからないと。はた目にわからないからこそ幸せなんですけどね。
③持続する幸福を充実させよう
若いうちは「金銭欲・物欲・名誉欲」をエネルギーに自分を磨き、せっせと働くのもあり。でも、ある程度手にいれると幸福度は変わらなくなります。これをさとったタイミングで、いかにふたつめの幸福(B)を充実させていくか? 早く気づくほど人生の幸福を満喫できるのではないでしょうか。
50代でも遅くはないですが、今は投資や副業で会社から自由になる選択肢がたくさんある時代。「健康・自主性・社会への帰属意識・良質な環境・自由・愛情」といった、目に見えにくい幸せを手に入れられる働き方を虎視眈々と狙っていてほしいと思います。
3,幸せの4つの因子とは
『幸せのメカニズム』のキモは前野先生が15,000人の日本人のデータから抽出した「幸せの4つの因子(要因)です。
1,自己実現と成長(やってみよう因子)
2,つながりと感謝(ありがとう因子)
3,前向きと楽観(なんとかなる!因子)
4,独立とマイペース(あなたらしく)
この要素のどれが強いかを調べるテストと結果の平均値も、こちらのHPにのっているので、興味のある人はやってみましょう。
私はどの因子も20ポイント以上で平均より高く、ここでもセミリタイアひきこもり生活の幸せが証明されちゃいました。各因子(要因)についてかんたんに説明しますね。
第1の因子 自己実現と成長(やってみよう因子)
「ひとりひとりが自分らしさを見つけ、小さくても社会に役立ち、成長していく」こと。自己実現、成長というと、競争に打ち勝って世界を変えるといった昭和的な価値観を連想するかも。でも前野先生は、おおげさなことではなく、言わば世界の70億人がオタク化(天才化)して、何かしら社会へ影響を広げていくことだと言います。
松尾芭蕉のように、身の回りに小さなおかしみをみつけることでもよいのです。ひきこもりにぴったりな世界観ですね。
*参考
50代セミリタイアひきこもりはマジで暇? 暇にならない3つの理由
第2の因子 つながりと感謝(ありがとう因子)
「人を喜ばせたり、感謝したりされたりするつながりや、愛情のもとに生きる」ということです。退職してひきこもると、会社関係のつながりは、うすーくなりますが、その分、なかなか会えなかった親きょうだいや家族と過ごす時間が増えました。趣味(音楽)の仲間との交流、SNSを通して様々な分野の人とのつながりも増えています。コロナ禍が収まったら、リアルに会う機会が激増しそうで、むしろコワイ。
前野先生の研究室では、多数の知り合いより、多様なつながりが、主観的幸福を高めるという結果も出ているそうです。人にもよるんでしょうが、会社の制約を離れ、セミリタイアしてからの方が、多様な価値観・立場の人とのつながりが広がるのではないかと思います。
第3の因子 前向きと楽観(なんとかなる!因子)
「将来を前向きに信じ、落胆した感情をひきずらずに切り替えられること。他人と親しくできること、自己受容ができている」などの要素を含みます。
ひきこもり志向の人は苦手な分野ですね。私ももともとは不安が強くて心配性なタイプ。ただこれは、40代半ばで体調を崩し、定期的にカウンセラーと面談することで、思考のクセが徐々に変わり、大幅に改善しました。
早期退職を決めたら、カウンセラーや産業医いわく「前向きな決断なので、むしろ健康になった証」。楽観的な人間になり、お金や帰属感の不安がなくなった結果、やめることができたと(笑)。会社側は「?!」な話かもですが、人間としてはひとつ上のステージに上がれた感じですね。
人はドツボに落ちても、何が幸いするかわかりません。もともと神経質で将来を悲観しやすいタイプでも、年齢、経験とともに変わっていくことはできるので、少しずつ心を整えていきましょう!
第4の因子 独立とマイペース(あなたらしく)
「自分に正直に、常識にとらわれない、自分らしい生き方」です。
日本人は人目を気にしやすく、組織やコミュニティの調和を重んじます。でも自分らしく振り切って生きた方が幸福度は高くなるそうです。前野先生は「独立していて、人の目を気にせず、マイペース」な「極限の変人」になることを読者にすすめています。
そういう人は、地位財(金・モノ・名誉など)を目指さない傾向があるので、持続する幸福を手に入れやすいという側面もあるそうです。
第4の因子は、「ひきこもりなのに幸福」の鍵となるものです。次のブロックで深堀りします。
4,孤独は不幸なの?
①究極の変人になれる環境とは
前野先生の言う「究極の変人」でいられるのはどんな環境か? 伝統的な会社組織は日本社会の縮図で、出る杭は打たれ、調和とルールと常識が歓迎されがちな世界。私の職場はそうでもなかったけれど、組織全体としてはあまり変人ばかりでは成り立たないですよね。
多くの人は組織から離れるか、自分が社長になるとかしないと「極限の変人」として生きるのは難しいのではないでしょうか?
②「独りだけどつながってる」現代の孤独
セミリタイアひきこもり生活は、まさに「独立とマイペース」を保つための装置。辞める前は、長年、苦楽を共にした仲間と離れて大丈夫かな?とか、子どもたちも巣立って家にひとりで寂しくならないかな?と思いました。
でも、職場と家庭を往復する生活は、「ちょっといいですか?」「ねえねえ」で思考中断の連続。今、朝から独りで好きなことに集中できるのが、超快適で、嬉しい。なんなら家族や知り合いとは、LINEでいつでも連絡がとれるし、場合によっては未読スルー可能です。なんとほどよい距離感! ありがたすぎて涙がでそうです。
③孤独が至福のひきこもり族
人は子どもの頃から家族や学校や会社で、多くの人に囲まれて生きていくので、孤独を恐れてしまいます。人間は社会的な動物ですから当然です。
でも世界的に「瞑想」が流行しているように、静かに考えをまとめたり、自己研鑽や内省ができる静謐な環境があることで、とてつもない幸福を得る人種も結構いるんですね。
「独立とマイペースは、幸福度を高める大切な要素」。セミリタイアひきこもり族を、あたたかい目で見守りましょう。
5,まとめ 「セミリタイアは不幸の始まり?」にならないために
●復習しましょう
「幸せには2種類ある」
A,「人と比べる幸せ(お金・地位・モノ)」
B,「人と比べなくても感じられる幸せ(健康、自由、愛情など)」
●Aは短期的な幸せ。Bの幸せの方が長続きする。
日本人の感じる「B」の幸せを分析した結果、関係が深いのは以下の要素
1,自己実現と成長(やってみよう因子)
2,つながりと感謝(ありがとう因子)
3,前向きと楽観(なんとかなる!因子)
4,独立とマイペース(あなたらしく)
というわけで、「収入、身分、モノ」をドブに捨てた50代のセミリタイアは、「不幸の始まり?」 ではなくて、上記の4つの要素をクリアしていれば、ひきこもっていても幸せ…ということがわかりました。
50代のセミリタイアは、定年退職とかなり似ています。「リタイア後もしあわせに生きる準備」は、働いている人全員の課題でもあるんですね。
リタイア後の生活に恐れおののいている方は、『幸せのメカニズム』に出てくるいくつかのチェックテストで、人生満足度やポジティブ度、幸せの要素がどのくらいあるか確かめてみることを、おすすめします。その上で、お金や地位、見栄の消費がなくなっても幸せになれるマインドを、日々の生活の中で身につけていきましょう。こちらの方が、老後2000万円問題以上に大切ではないでしょうか。
まだまだ定年まで何10年もあるっていう人も、世間からみた幸福ではなく、自分自身が本当にしあわせを感じているか?をチェックすることはおすすめです。『幸せのメカニズム』をそばにおいて、時々読み返していくと、ジワジワと人生が変わってくるのではないでしょうか?
「幸せとは何か?」折々に思い出せるように、4つの因子と関係する要素を下に貼っておきますね。
それではまた~!
*参考
幸せの4つの因子と、関係の深かった要素(詳しくはこちらのサイトへ)第1因子 「やってみよう!」因子(自己実現と成長の因子)
・コンピテンス(私は有能である)
・社会の要請(私は社会の要請に応えている)
・個人的成長(私のこれまでの人生は、変化、学習、成長に満ちていた)
・自己実現(今の自分は「本当になりたかった自分」である)第2因子 「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)
・人を喜ばせる(人の喜ぶ顔が見たい)
・愛情(私を大切に思ってくれる人たちがいる)
・感謝(私は、人生において感謝することがたくさんある)
・親切(私は日々の生活において、他者に親切にし、手助けしたいと思っている)第3因子 「なんとかなる!」因子(まえむきと楽観の因子)
・楽観性(私はものごとが思い通りにいくと思う)
・気持ちの切り替え(私は学校や仕事での失敗や不安な感情をあまり引きずらない)
・積極的な他者関係(私は他者との近しい関係を維持することができる)
・自己受容(自分は人生で多くのことを達成してきた)第4因子 「あなたらしく!」因子(独立とマイペースの因子)
http://lab.sdm.keio.ac.jp/maenolab/questionnaire_about_happiness.htm
・社会的比較のなさ(私は自分のすることと他者がすることをあまり比較しない)
・制約の知覚のなさ(私に何ができて何ができないかは外部の制約のせいではない)
・自己概念の明確傾向(自分自身についての信念はあまり変化しない)
・最大効果の追求のなさ(テレビを見るときはあまり頻繁にチャンネルを切り替えない)