●貯金が減るだけの生活。貴重な体験
こんにちは。30年以上働いてセミリタイアし、半径500m・無収入生活を満喫している桜畑です。失業保険の給付も終わり、いよいよ貯金を取り崩して生活する日々が始まりました。食費や光熱水費はまだ働いている夫が負担してるので、基本生活費の心配はないんですけどね。
物心ついてからずっと、親から小遣いをもらったり、会社から給与をもらったりして生活してきたので、「定期的な収入がない生活」ってほぼ初めての体験です。うっかり定年まで働いてしまったら、「年金」という定期収入が発生してしまうので、この貴重な体験ができなかった、危ない、危ない(笑)。
●なぜ焦らない?
老後資金を貯めるべき50代なのに、「資産(貯蓄)」のグラフは、順調に右肩下がり。さすがに焦ったり不安になって、また働きたくなるのでは?と思っていたんですけど、「うゎ~!減ってきた減ってきた…いいねぇ♪…」なんて喜んでいる自分にびっくり(貯蓄額は年金がでるまで足りるか?ギリギリ…(笑))。
会社に通って給料をもらう生活をやめたら、今までの「お金」の常識がひっくり返ってしまった…。それはいったい何なのか?
その名もずばり『お金の減らし方』という本をご紹介しながら、考えていきたいと思います。
*退職後1年のお金のことはこちら
50代セミリタイア ひきこもり1年。お金ってどうしてるの?
1,『お金の減らし方』はこんな本
著者の森博嗣(もり ひろし)氏は元国立大学の工学博士。鉄道模型好きが高じて自宅の庭に線路を敷き、自作のミニSLを走らせていることで知られます。
そのお金を稼ぎ出すために、夜のアルバイトとして書いてみたという小説『すべてがFになる』がいきなり文学賞をとり、30代で人気作家に! 20億という印税を得るも、ブランド品など富裕層的な消費に関心はなく、2000平米の自宅で、ラジコン飛行機を飛ばしたり、世界のレアな模型を集め続けるなど、趣味に情熱を注いでいらっしゃいます。
編集者から「お金の増やし方」についての本を依頼されて書いたのが本書「お金の減らし方」。このあまのじゃくぶりも最高ですね。
2,人生の目標は自己満足
仕事は1日1時間だけ。取材・講演も拒否。SLを走らせ、ラジコン飛行機を飛ばして楽しんでいる筆者。「人生の目標は自己満足」と言い切ります。『幸福のメカニズム』*で推奨されている「極限の変人」を地でいくような生活ぶりですね。
こんなスケールの大きな遊びの話をきくと、大抵の人は「お金がないからできない」と思いますよね。でも筆者は、お金がないからできないというのは「当たり障りのない理由を遠回しに述べただけ」で「本当はやりたくない」のだと切って捨てます。
多くの人は「自分以外のものに支配されている。それは周囲の身近な人」。「人に認められないと嬉しくないとか、意味がないという価値観に従っている」から 「自分という存在を消してしまう」と、凡人が見てみぬふりしているコワ~イ真実を、読者に突きつけていくんですね。
*『幸福のメカニズム』レビューと感想はこちら
50代セミリタイアは不幸の始まり?ひきこもって考える『幸せのメカニズム』
3,☓お金があるから使う ○したいことがあるから稼ぐ
大学の仕事のあと睡眠時間を半分に削って小説を書き、庭にSLを走らせる夢に邁進した筆者。作家になりたかったわけではなく、自分の能力と世間の需要の合致するところを探した結果の選択だとか。
「欲しい物がある。それを手に入れるためにがまんして働く」のが正しい順番だと言います。
欲しい物のために働くとはどういうことか? 私は先日、ご近所ノマドを快適にするためにPC用のバッテリー(約1万円)を入手しようと思いたちました。この分のお金を調達してみよう!と思って、読み終わった本や、使わない雑貨をせっせとメルカリに出品。1週間で10,000円の売上に! メルカリ、すごい!
ちょうどアマゾンプライムデーがやってきたので、予算より安くアマゾンで購入。ずしりと存在感のある「Anker大容量バッテリー」*が家に到着しました。
その時の嬉しさって、ふつうに買ったときとぜんぜん違うんですね。一種のゲームとして「稼いで買う」的な方法にトライしたんですが、メルカリ出品の労力が報われた気がしてとっても満足な上、本やモノも減ってスッキリ。
なんとなく稼いでなんとなく使うのと違って、「欲しいものがある→その分だけ稼ぐ」はとてもシンプルでムダがないんです。
*モバイルバッテリーを買った話はこちら
SurfaceProを急速充電!Anker大容量モバイルバッテリーで、安定のご近所ノマド生活
4,何か買いたい症候群にハマる本当の理由
給料日にちょっと何か買いたくなる心理を「なにか買いたい症候群」と呼ぶ森博嗣氏。ストレスからお金をつかうことを「わるいとは言ってない」でも「本当にそれがほしかったのですか?ときいているだけである」ということばに、ドキッとさせられる人も多いのではないでしょうか。
実際私も、通勤してたときは駅や店で目につくと、なんか買わなねば…みたいな謎の衝動にかられ、かわいいソックスとかステーショナリーとか、ちょこちょこ買ってました。今はそういうのがほとんどない。セミリタイア半径500m無収入生活は、ストレスと誘惑がなく、代わりに満足感と自由があるからですね。
一方でたとえば趣味の音楽関連の出費。楽譜や楽器のメンテナンス、レッスンやコンサートなど結構な額を占めますが、お金を使うことに、まったく痛みも後悔もない。数字を見ても「よしよし、今月もちゃんと使ってる、よかった」…と思うんです(一応予算の枠は決めてますよ)。
つまり「正しいお金の減らし方」は純粋に好きでたまらず、自分が満足できるものにしっかり使うこと。それには「自分が何をしたいか」をちゃんと見つけよ、ということですね。
なんとなく就職して、目についた服や雑貨や車を買って、なんとなく結婚、子育て、住宅ローンと流され、ある時ふと、あれ?「自分の好きなことに費やすお金がない!」と気づく。
それならまだしも、「好きなことって何だっけ?」という状態に陥ってしまうことも少なくないからコワイんです。
筆者のエピソードのひとつが、助教授になって給与が上がったとき、嬉しくないので妻に黙っていた(笑)というもの。出張や会議で自由に研究ができず「これが労働というものか…」と悩みます。そのあげく思いついたのが、“作家バイト“だったそうです。会社や組織の仕事=趣味にするのはなかなか難しいですね。
5,結論 なぜお金を減らすのが嬉しいか?
著者はお金をお金としては見ていません。お金とは何か?という章でこう述べています。
仕事というのは、そもそも自分のエネルギィと時間を提供し、お金を得る交換である。この場合、エネルギィと時間が失われ、一旦、お金という仮の数字に置き換わる。そして、次はそれを用いて、自分が欲しいものと交換をする。自分のエネルギィと時間を、欲しい物に変換することができる。
『お金の減らし方』第一章 お金とは何か より
働いたお金=貯蓄は、自分の時間とエネルギーを数字に置き換えたもの。それを時間差で引き出し、本当に欲しい物にかえるのが正しい「お金の減らし方」だということですね。
セミリタイアして自由時間をどう使うか?に向き合うと、本当にしたいことがはっきりと見えてきます。
働くのをストップして貯蓄を取り崩して生活していても、不安でなくむしろ快感なのは、過去の仕事で蓄えた自分の時間とエネルギーを、もう一度レンジでチンして美味しいご飯にもどしてゆっくり味わっているからなんだなぁと、思い至りました。
『お金の減らし方』はビジネス本やハウツー本のように、すぐに役立つノウハウが整理された本ではありません。でもひょうひょうとした文体で語られる経験談や思考に触れているうちに、「稼ぐ」「貯める」「増やす」といった資本主義的な囚われから、いつの間にか解き放たれていきます。
そして、好きでたまらないことに、エネルギッシュにお金を「減らし」ていく森博嗣氏の、とっても人間らしい生き方にぐいぐいひきこまれて読んでしまうんですねぇ~。
「お金の貯め方」以上に大切な「お金の減らし方」。あなたの貴重な時間とエネルギーを、何に替えれば本当に自分らしく生きた、と思えるか? ぜひ、この本を読みながら考えてみてくださいね。
それではまた~!